初めまして。お金がないギャンブラーです。
お金がない物語。 とりあえず登場人物はみんなお金がない・・・でも諦めない!
初めまして。お金がないギャンブラーです。
お金がない物語。 とりあえず登場人物はみんなお金がない・・・でも諦めない!
長期にわたる厳しい研修も今日で終わるのかと思うと、何だか寂しい気持ちが湧いてくる。
不思議だよね、最初はあんなにも憂鬱だったと言うのに。
そして、魚住店長が最後に一言。
「明日からは新たなスタート地点に立たされるが、臆することなく立ち向かえ。
最初のうちは失敗したっていい。
大事なのはその失敗から学び次に活かすことが出来るかどうかだ」
「「はいっ!!」」
皆が大声で返事をして気合を入れる。
研修が終わり、明日からはきちんとしたカジノの場で仕事をすることになる。
いよいよ明日からだ・・・ちゃんとこなせるかな・・・。
自由な時間が今日しかないから、久々にギャンブルでもしようかな?
仕事中は見ているだけで自分が出来るわけではないし・・・。
研修が終わって、私はすぐに更衣室へと向かい体を見られないようにさっさと素早く着替えてしまった。
今日はブラックジャックでもやろうかな、あのゲームって単純だけど面白いんだよね。
とあるカジノへと足を運んでいくと、急に解放されたような気分になって心が弾む。
ギャンブルが出来ると思うだけで、こんなにもウキウキしている自分がいる。
こりゃ、完璧にギャンブル依存症だな・・・。
でも、誰にも迷惑をかけていないからいいよね?
そして、カジノについて私は会場内を物色することに。
やっぱり一番人気はルーレットとバカラかぁ・・・あれは完全に運次第だもんね。
私はそんなに運が強くないからきっと向いていない。
ここはブラックジャックが一番かな!
そう思ってその台へと向かっていくと、見覚えのある人物の姿があり私は嫌そうな表情を浮かべた。
「イカサマだっ!!」
「お客様、言いがかりはおやめくださいませ・・・。
他のお客様のご迷惑にもなりますので・・・」
「何が言いがかりだ!!
俺は一度も負けたことが無いんだぞ!!
賭けた金を全て返せッ」
そう、文句をまき散らしている男は郷倉だった。
かつて同じ会社に勤めていた最も顔を合わせたくなかった人間だ。
自分が負けたからといってディーラーに文句をまき散らし、他のお客にも迷惑をかけている。
素直に負けを認めればいいものを、子供みたいに文句ばかり言っていい迷惑だ。
周囲の連中も皆、迷惑そうな表情をしながら郷倉を見ている。
ディーラーは立場上、強く言い返すことが出来ないから困っている。
本来だったら強く言い返したいところだが、そんなことをしてしまえば店に泥を塗ることになってしまうから出来ない。
見るに見かねて私はその場から歩き出した。
「もう会う事はないと思っていたのに、またお前か。
負けたのはお前に運が無かっただけの事で、誰もイカサマなんかしていないだろう。
それをガキみたいにごちゃごちゃとうるさいんだよ」
「な、なんでお前がここにいるんだよ?!」
「そんなの私の勝手だろうが。
ほら、迷惑だからさっさと立ち去れって」
「ギャンブルを知らない奴は黙ってろ!!
お前こそ、さっさといなくなれ、目障りなんだよッ」
郷倉は堪忍袋の緒が切れたと言った様子だが、私だってイラついている。
どうして合わなくて済むと思った嫌な人間がこんなところに現れてしまったのか。
本当に迷惑な話だよ、こっちからしてみればさ。
このまま言い争いをしていてはお店側に迷惑がかかってしまう。
イラついているがここは落ち着いて退散した方が良さそう。
私が背を向けると、郷倉が後ろから私にある言葉を吹っかけてきた。
“女はうるさくてかなわない、女は女らしくしてればいいんだ”と。
その瞬間、私の中の何かがぷつんと切れたような気がした。
何故ならその言葉は、あの父親が放った言葉とまったく同じものだったから。
私は頭に来て郷倉の方へと戻った。
冷酷な眼をして郷倉を見て、ディーラーの人からトランプを受け取った。
「何だったら、この私とポーカーでもして決着付けるか?
お前が勝ったらさっきのお金を返金する、もし私が勝ったらすべてのカジノ出入り禁止でどう?
もちろん、逃げたりしなよな?」
「あ、当たり前だッ!!
お前こそ逃げるなよ!!」
私と郷倉でポーカーをすることになった。
ポーカーは持ち前の運の良さが重要になってくるから、勝てる自信はそこまでない。
だけど、今回だけは負けるわけにはいかない。
この男をカジノ出禁にしなければ、他のお店にも迷惑がかかってしまう事になるから。
私達の話を聞いていた周囲が周りに集まってくる。
ルールは至って簡単だから、説明するまでもないと言うか郷倉が分かっているから説明はいらないと豪語したからいらないと思った。
私はもともとルールを知っているから、ディーラーの人にトランプを任せた。
最初にトランプを数枚配られて、お互いに手札を確認する。
あんなことを言ってしまった手前、負けるわけにはいかないからいい札でありますように・・・!
私の手札は・・・だめだ、これじゃ勝つことは難しいかもしれない。
だけど、運は一番最後にツイてくるものだと私は思っている。
今はまだ弱いかもしれないけど、最後はどうなるのか分からない。
さぁ、ゲームの始まりだ!
「ビット」
「コール」
郷倉がチップを出すから、私も郷倉と同じ枚数のチップを出してゲームを続ける。
カードを交換しながら自分の手札を、より良い物へと変更していくがこれが難しいんだよね・・・。
郷倉は何だか雲行きの怪しい表情をしている。