私の名前は、雪城このみ。
現在、年上の彼氏であるショウと同棲生活をして幸せに暮らしている。
結婚していないけれど、いずれは結婚するつもりでいる。
ショウと付き合って今年で3年目になる。
相変わらず、仲良く過ごしている。
今までの彼氏とはなかなかうまくいかなかったけど、彼は違う。
実は、私ギャンブラーで競馬とかパチンコとかが大好きで結構やっている。
ショウにはまだ明かしていない、ずっと隠し続けている。
今までの彼氏に言って失敗してきたから、黙っていることにしたけど・・・本当は良くないよね?
だけど、別に知らなくてもいいよね、借金しているわけでもないんだし。
幸せを壊したくないから嘘ついて、その嘘を嘘だと知られたくなくて嘘を上から重ねていく。
「このみ、今日はどこへ行こうか?」
「うーん、今日は水族館に行きたいな」
「じゃあ、行こうか」
そう言って、休日に水族館へと向かう。
どこに行きたいか聞かれた時、うっかりパチンコと言いそうになってしまった。
ギャンブラーと言っても、おっさんみたいな格好とかしてないよ?
ちゃんと可愛く思ってもらえるように、化粧だってしているしファッションだって調べたりして研究しているんだから。
干物女でもないし、そこはギャンブラーとは違う。
まぁ、私が強運を持っていて勝ちやすいと言う部分も違うとは思うけど・・・。
水族館へと向かうと、色々な魚が泳いでいて綺麗だった。
熱帯魚とかイワシとか泳いでいて、可愛らしかった。
小さな子供たちもスゲー!と言いながら見ている。
「ショウ、見て!
あっちにマグロが泳いでるよ!」
「本当だ、食べられるのかな」
「駄目だよ、何でもかんでもお寿司にしたら!」
「あはは」
泳いでいるマグロを見て、子供たちも“あれでお寿司何人分?”と聞いている。
どうしてすぐお寿司のネタとして見てしまうんだろうか。
マグロからすれば、そんな会話すら聞きたくないだろうに・・・。
お寿司のネタとして有名だから、どうしても何人前?と思われちゃうんだろうなぁ・・・。
それでも、何だか少しマグロが可愛そうだった。
でかい図体の割には、動きが早いような気もする。
他にもサメやマンボウが泳いでいる水槽が見える。
サメって海で見るとすごく怖いけど、水族館にいるサメはなんだか可愛い。
歯がぎざぎざしていて怖いけど、顔が可愛らしく見える。
「マンボウって大きいのな!」
「ほんと、すごーい!」
マンボウって、マンボウだけしか水槽に入っていない。
この水族館だけではなくて、他の水族館でも、だいたいマンボウは孤立している。
他の魚とは一緒に入れないのは、マンボウが神経質だからなのかな?
いつも一人ぼっちで何だかかわいそうと言うか、寂しそうで見入ってしまう。
更に奥へ進んでいくと、電気ウナギが水槽の中を泳いでいた。
くねくねして、まるでウミヘビのようで少し気色悪く見えた。
上には電圧計が出ていて、何ボルト発電しているのか数字が表示されていた。
大きな数字ではないけれど、発電しているのが見てわかる。
見ている人達が増えると少なくて、誰も居なくなった途端ボルト数が高まった。
何だろう、あの電気ウナギもっとみんなに見てほしいのかな?
「また見に来たよ」
そう声をかけてウナギを見ると、すごいボルト数を叩き出した。
・・・マジか!
ショウもやってきて、そのボルト数を見て驚愕している。
この電気ウナギ、何だかすごいな・・・。
それから今度はペンギンコーナーへと向かっていく。
疲れているのか、ほとんどのペンギンが岩の上に乗っかって立ったまま。
ピクリとも動こうとしない。
泳ぐところが見たかったなー・・・。
「あっ!」
その時だった。
一羽のペンギンがよちよち歩きはじめ、水に近づいた。
水の中に入って泳いでくれるのかな?
入ってくれれば可愛いだろうに。
そう思っていたら、後ろに立っていたペンギンがくしゃみをして、そのペンギンにぶつかり驚いたそのペンギンがそのまま水にボチャンと落ちてしまった。
それを見ていた周囲の人達が笑い始めた。
「何今の・・・可愛いんだけど!」
「確かに、いまの・・・ははっ!」
私とショウも面白くて笑ってしまった。
こんなことってあるんだ・・・ペンギンでも人間と同じであんなふうになるなんて。
歩き方もかわいいけど、泳いでいる姿もやっぱり可愛い。
岩の上でお互いに毛づくろいしているペンギンの姿もある。
いいなぁ、自由気ままで本当にうらやましい。
皆で写真を撮っているから、私も携帯を取り出して写真を撮った。
ショウとペンギンが一緒に写るように撮ったりもした。
思い出は少しでも多い方がいいから。
だけど、この時の私はまだ何も知らなかった。
この幸せが終わる日が来てしまう事を。
「次はエイを見に行こうか」
「うん、そうしよう!」
私達が次に向かったのは、エイが泳いでいる水槽だった。
何匹か泳いでいるが、一匹だけ壁に沿うようにして上下運動を繰り返している。
どこにでもいるよね、壁に沿って謎の動きをしているエイって。
それがまた可愛らしくて、つい見入ってしまう。
他のエイと仲が悪いのかと思ったが、どうなんだろう・・・。
ふと近くの人だかりに目が行って、よく見てみるとエイと触れ合えるコーナーが出来ていた。
そこには子供から大人までがエイと戯れていた。
楽しそう!
「ショウ、楽しそうだから行ってみようよ!」
「よし、行ってみるか!」
二人して、エイが触れるコーナーへと向かって走っていく。
それは大きいエイではなくて、まだ小さなエイで気持ちよさそうに水槽の中をひらひら泳いでいる。
子供たちがそんなエイの背中をなでなでしている。
エイの口って面白いし、お腹の部分が顔のようになっていて可愛い。
中には嫌いだっていう人もいるけど、私は好き。
それに小さなサメも泳いでいるから、サメも触れるという二大特典!
小さいサメなら怖くないから安心して触れる。
だけど、ショウはサメに触れようとはしなかった。
「なーに、ショウ!
もしかして、サメ怖いの?」
「ち、違うって!」
「ふーん?」
そう言ってサメを触った手でショウに触れようとしたら拒絶された。
今のはちょっとショックだったかも。
そんなに怖がらなくたっていいのに!
そんなショウを放置して、私はサメやエイと戯れ続けた。
飼えたらいいのにと思うけど、やっぱり世話するのが大変だよね・・・残念。
飼育員になるのが私の小さなころの夢だった。
動物が好きで、いつか飼育員になりたいと思っていたけど・・・。
それが今では普通のOLでギャンブル三昧。
やっぱり、理想と現実なんてこんなもんだよね・・・はぁ。
私はため息をつきながら、ショウの元へ戻っていく。
「お、終わったのか?
次は・・・そろそろ夕飯にしないか?」
「うん、私お腹空いちゃった!」
「じゃあ、食べに行こうか」
私達は夕食を食べるために、水族館内のカフェに入った。
そこのメニューは、魚たちのメニューが写っていた。
ペンギンのタマゴという、美味しそうなバニラアイスに白玉や生クリームが乗っているデザートや玉子にケチャップで顔が書かれているエイのオムライス。
どれも美味しそうだし、可愛くてどれにしようか迷ってしまう。
私もショウも食べたいものを決めて、注文した。
メニューが運ばれてくるまでに、時間はあまりかからず早い方だった。
アツアツのうちに二人して食べてお腹を満たしていく。
「明日からの仕事、また頑張ろうな!」
「うん、頑張らなくっちゃ!」
二人とも元気をもらって、明日の為に備える。
毎日がこんな風に楽しいなんて、なかなかいないんじゃないかって思うんだよね。
私は本当に幸せ者なんじゃないかって思う。
ギャンブルだって勝ち続けているくらいだし、怖いもんなしって感じかな。
私は強運の持ち主だからね、負け組なんかじゃないんだ。
その後、私はショウが運転する隣の席で眠ってしまった。
明日もまた楽しい日々が過ごせる、・・・そう信じて。